INTERVIEW vol.001
1箱(12本入り)800円
道南・七飯町、北海道新幹線の新函館北斗駅から車で10分ほどに位置する株式会社天狗堂宝船は、1953(昭和28)年創業の老舗製菓。創業時から地元の特産品や風土を生かした菓子づくりにこだわり、なかでも、看板商品の「きびだんご」は、北海道民から半世紀にわたって愛されるロングセラー商品です。
北海道で定着している昔ながらの個装パッケージ
「『北海道でなぜきびだんごなの?』とよく聞かれるのですが、北海道開拓に従事した屯田兵の携帯食だったこと、『事が起きる前に備え、団結して助け合う』という開拓時代の精神に由来し“起備団合”と名付けたのが始まりなのです」と代表取締役の千葉仁さん。小麦粉、もち粉、水を釜で熱しながら撹拌し、砂糖や餡、水あめなどを加えて練り上げ、短冊状に成形してオブラートでくるりと包んだ餅菓子で、餅粉やきび粉を使った岡山名物の「吉備団子」とは原料も製法も全く異なります。
本事業の応募のきっかけを語ってくださった千葉社長
北海道独自の「きびだんご」として地域に根付き、親しまれていますが、さらにもう一歩、北海道みやげ、贈答品というランクアップしたイメージも確立していきたいと考えていたところ、「自社の固定概念を覆してくれる、新しいアプローチと出合えるのではないか」と思い、北海道パッケージデザインコンテスト2016に応募しました。
コンテストでは同社のきびだんごに70以上もの応募作品が集まり、社内で検討を重ねた結果、優秀賞を受賞した「ノノグリ/滝沢啓さん(長野県)、郭庚熙さん(千葉県)」のデザイン案をおみやげ用として商品化することに。「愛らしい桃太郎のキャラクターたちと、一本一本に添えられたユーモラスなコピーのほのぼのとした世界観が、きびだんごの素朴で優しい味わいとマッチしていて、手土産や贈答品にも喜ばれるはず!と、社内でも大好評でした」(千葉社長)
コンテスト応募時の作品
北海道で定着している昔ながらの個装パッケージもそのまま残し、これまで通り販売し、おみやげ用にシフトした箱入りのパッケージを作成することになりました。
当初は1箱20本入りを想定していましたが、おみやげとして持ち帰るにはやや重く、イニシャルコストの面でも厳しかったため、ノノグリさんと意見を交換していく中で、1箱12本入りのスタイルに決定し、デザイン料も相談しながら取り決めました。「一本ずつ絵柄とコピーが異なるデザインのバリエーションも魅力なので、なるべく本数を多く、それでいて重すぎないボリュームを狙いました」(千葉社長)
個装には可愛らしいイラストにマッチしたコピーが施されている。
「きびだんご物語」と命名したおみやげ用新デザインは、2017年の夏に発売。北海道内の観光地やみやげ店を中心に、全国各地の展示会、物産展などで販売し、売れ行きも順調。特に女性のお客様から好評をいただいております。
また、現在販売している個装のきびだんごシリーズは、製造から個装までをすべて自社工場で手掛けていましたが、新デザインの「きびだんご物語」は、箱詰め作業を地元の業者に委託しています。
「きびだんご物語」は箱詰め作業を他社へ委託することで効率UP。
「箱詰め作業を委託するのは初めての試みで、今後も商品開発を行っていく上で、心強いサポートになっていくと思います。北海道パッケージデザインコンテストへの参加をきっかけに、ソフト面、ハード面の双方で、自社にはなかった新しい発想と出合えたことは、本当に貴重な収穫でした」(千葉社長)
INTERVIEW vol.002
【店頭販売限定】1,500円(税込)
「ほんだ菓子司」は、札幌市と旭川市のほぼ中間に位置する砂川市で昭和32年に創業した老舗菓子店。砂川市はかつて炭鉱のマチとして栄え、近年は多くの菓子店やカフェが建ち並ぶことから“すながわスイートロード”と呼ばれ、人気を集めています。同社は、そんなスイーツのマチを拠点に、近郊の滝川市、美唄市、芦別市など空知エリアで計7店舗を展開。2017年には、北海道初のギリシャヨーグルト専門店「エフ・ヨーグルト」も開業しました。看板商品は、発酵バターの風味、サクサクとした鮮度の高さとコクにこだわった、紅玉リンゴのアップルパイです。なかでも、パッケージデザインコンテスト北海道2015に応募した「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」は、その主力商品であるアップルパイを進化させた期待の新商品でした。
主力商品の「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」
「数年前、隣接する滝川市役所の方から『地元の香西農園がおいしいサツマイモを生産しているので、これを使った新しいお菓子を作っていただけませんか?』とお声掛けいただいたのが新商品開発のきっかけでした。サツマイモは温暖な地域の農産物というイメージがあったので、当初は半信半疑でしたが、実際に味わってみると、とてもおいしく、驚いたのを覚えています。弊社はもともとリンゴを使ったお菓子とパイは得意分野なのでこれに新たな地元の食材・サツマイモを掛け合わせることで、おいしい新商品ができるのではと思い、開発を始めました。サツマイモの甘さとリンゴの甘酸っぱさはとても相性が良く、商品開発は順調に進み、納得のいく自信作を仕上げることができました」と、代表取締役の本田啓輔さん。
滝川市「香西農園」のさつまいも
「北海道経済産業局から農商工連携事業の認定を受けた際、様々な支援制度をご紹介いただく中で、パッケージデザインコンテスト北海道のことを知りました。『香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ』は、弊社の新ブランド商品に位置付け、全国展開を目指していきたいと考えていたので、このコンテストは、多種多様なパッケージデザインと出合える絶好のチャンスと期待して応募しました」(本田社長)
グランプリに輝いた「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」パッケージのシンボルマーク
コンテストでは、同社の「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」に24の応募作品が集まりました。「審査会で応募作品を拝見し、デザイナーのみなさんが、弊社のお菓子作りへの思いや香西農園さんのことをよく調べていただき、それをさまざまなカタチで表現して下さったことに、とても感動しました」(本田社長)その後、社内で検討を重ねた結果、グランプリに輝いたAMAYADORI/佐藤健一(札幌市)の応募作品を商品化することに。特に女性スタッフからの評判が高く、「すごくかわいい!」「誰かにあげたくなる」といった声が上がったそうです。
デザイン料については、「当初手探りの状態でしたが、コンテスト事務局のアドバイスをもらいつつ、デザイナーさんと話し合いながら、弊社の現実的な予算とデザイナーさんに失礼のない料金というところで決定していきました」(本田社長)AMAYADORIの佐藤さんには、パッケージデザインからPOPデザイン、ポスター、ホームページまで、トータルにデザインプロデュースを依頼しました。
以前は既製品の箱に簡易な帯を付けて販売していましたが、トータルプロデュースのもと、新パッケージで販売を開始すると、売り上げはなんと500%アップに!「新しい販路も開拓でき、改めてデザインの力はスゴイなと実感しています。また、新パッケージを採用したことで、社内でも『この新商品をしっかり売っていこう!』という販売意欲が高まったことも大きな収穫でした」(本田社長)
「香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ」パッケージ
「弊社にはもともと懇意にしているデザイナーさんがいまして、新パッケージをAMAYADORIの佐藤さんにお願いするにあたっては、お二人とも大切な存在ですので、細心の配慮をしながら、やりとりさせていただいたつもりです。そんな中、お二人のデザイナーさん同士がつながってくれて、一緒に仕事をお願いしたり、お互いに勉強してくれたりと、良好な関係を築いてくれたことが、とても嬉しかったです。今では、毎年香西農園で行う春のサツマイモの苗植え、秋の収穫に、2人のデザイナーと一緒に参加し、土の上で汗を流しています」(本田社長)
毎年恒例になっている「苗植え」と「収穫」。写真は収穫時のもの。
「例えば、弊社よりずっとおしゃれな洋菓子店で、一般名称や既存のパッケージで販売しているケースがあり、味はとてもおいしいのに、地域性や独自性は感じられず、残念に思うことが多々あります。しかし、独自のネーミングやパッケージデザインを使用することで、お土産にしたいと思ったり、誰かの記憶に残ったり、お店を思い出してくれたり、地域の風景を思い出してくれたり…様々な効果が期待できると思うのです。『香西農園のおいもと紅玉りんごのパイ』その大事なネーミングを模倣などから守るため、特許庁へ商標出願しました。すべての商品を出願することは難しいと思いますが、まずは『この商品だけは絶対に守りたい!』という社運をかけた商品から出願してみてはいかがでしょうか(本田社長)