年頭所感
経済産業省北海道経済産業局
経済産業省北海道経済産業局長 岩永 正嗣
冒頭、本年1月1日に発生しました令和6年能登半島地震において亡くなられた方々に心からご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。
引き続き厳しい状況が続く国際情勢を背景として、エネルギー価格や物価の高騰、原材料のひっ迫や人手不足等の問題は日本の社会に深刻な影響を与えています。これに加えて、円安や海外経済の停滞も相まって、日本経済の先行きは依然として不透明な状況にあります。
一方、明るい兆しも出てきています。企業の中には、人手不足への対応としてDX推進や生産性向上を図る投資の動きが見られ、全国的には半導体やEVの分野を中心に設備投資の拡大が続いています。北海道においても、政府主導の下、ラピダス社を中核とした半導体拠点の整備や洋上風力等の再生可能エネルギーの導入拡大等が進められており、今後も大規模投資の継続が期待されるところです。
北海道は、全国を上回るペースで人口減少が進むほか、高齢化率も全国平均に比べて高水準である等構造的な課題に直面していますが、一方で豊かな自然や住環境、国内最大の再生可能エネルギーポテンシャル、ユニークな観光資源等、多くの強みを有しています。これまで以上に道内各地に人や資本を呼び込み、蓄積させていくためには、北海道が持つ強みを更に磨き上げ国際競争力を強化していくと同時に、地域や事業のイノベーション・変革を加速化させていくことが必要です。
また、地方において人口の減少や流出が続く中、地方で良質な雇用機会を創出していくことは非常に重要です。若者や女性があらゆる地域で仕事や暮らしを選択することができる社会を構築するべく、地域経済や企業を活性化して地域の包摂的成長の実現を目指していくことも必要です。
経済産業省では新たにミッション志向の産業政策を打ち出しており、「国内投資拡大、イノベーションの加速、国民の所得向上」この3つの好循環の実現を目指しています。私ども北海道経済産業局においても、以下の取組を全力で推進してまいります。
まず、国内投資の推進、国際競争力の強化です。世界的に更なる需要拡大が見込まれる次世代半導体の拠点化を北海道において着実に進めていくとともに、関連する企業・産業の取引活性化やデジタル人材の育成・確保にも注力していきます。また、このような新たな産業立地において必要となるクリーンエネルギーを確保するべく、洋上風力の導入拡大、水素・アンモニア等の新たなエネルギーの利活用拡大に向けた環境整備を推進していくとともに、エネルギーの安定供給を目的に、安全性の確保を大前提とした泊発電所の再稼働、寿都町と神恵内村における高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する文献調査等について、地域のご理解とご協力を得ながら取り組んでまいります。また、北海道の強みである食・観光産業の国際競争力の強化に向けて、食輸出プラットフォーム等を通じた生産現場・製造工程での生産性向上や輸出の支援、アドベンチャーツーリズムの推進等を通じた地域観光産業活性化にも継続して取り組んでまいります。
第二に、イノベーション・変革に向けた地域・企業の新たな挑戦の支援です。経済成長のドライバーとなるスタートアップ企業を迅速かつ大きく育てるべく、事業会社や自治体とのマッチングやエコシステム等の構築に取り組んでいくとともに、宇宙産業・スポーツ産業等の北海道の特性を活かした新産業の創出も推進してまいります。新興企業だけではなく既存企業に対しても、若手後継者(アトツギ)が新事業展開や新分野進出に挑戦するアトツギベンチャーの拡大に向けた支援体制の充実化や、中小企業等への資金繰り・事業再生など、地域企業が新たな挑戦に取り組んでいくために必要な環境整備にも引き続き注力してまいります。
第三に、地域の包摂的成長を通じた国民所得の向上です。地域の核として地域経済を牽引する中堅・中小企業に伴走し、新事業展開や生産性向上等の集中支援により地域の稼ぐ力を高めていくと同時に、価格転嫁対策やパートナーシップ構築宣言等の取引適正化を推進し、賃上げに向けた企業の原資確保も後押ししてまいります。また、地方圏における持続的な生活基盤の構築も大きな課題となりつつある中、物流課題の解決に向けたフィジカルインターネットの実現等、地域経済の維持・発展にも挑戦していくほか、製品安全確保や悪質商法対策を進め、消費者の利益を守ります。
以上の取組を着実に推進し、好循環を生み出し、「強い北海道経済」を実現することを目指し、関係機関の皆様とともに職務に邁進してまいります。より一層のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
本年が皆様にとって実りの多い飛躍の年となりますよう祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。