マルチ商法で購入した化粧品のクーリング・オフを拒否された
しばらく連絡を取っていなかった学生時代の友人から「久しぶり。今度会わないか」という電話があった。懐かしさもあって承諾し、待ち合わせ場所のホテルに着くと、そこには友人と友人の仕事仲間という女性Xが待っていた。最初はみんなで世間話をしていたが、途中からXが「とてもいい化粧品がある。自分用に買うのもいいが、人に紹介して売れればその分マージンがもらえる。こづかい稼ぎになる」という話を持ちかけてきた。儲け話には興味はなかったが、同席している友人の手前もあって断り切れず、その場で会員登録を承諾して販売用の化粧品を30セット購入する契約を結んだ。1週間ほどして化粧品が自宅に届きしばらく置いておいてみたものの、改めて考えるとこれだけの量を売りさばく自信もなく、自分用で使い切るには量が多すぎるので、契約書に記載の連絡先に電話でクーリング・オフを申し出た。しかし相手からは「契約書面を受領してから20日間を経過しているのでクーリング・オフはできない。」と言われた。どうしたらよいか。
アドバイス
個人を販売員として勧誘し、その個人がさらに次の販売員を勧誘することで、連鎖的に組織を拡大させるような取引は、マルチ商法(連鎖販売取引)として法規制の対象としています。
これはマルチ商法を行う組織や契約内容が複雑なこと、言葉巧みな勧誘で必ず利益があがると信じ込まされてしまうことなどから、商取引に不慣れな個人が契約内容をよく理解しないまま一時的な興奮に駆られて契約し、後日トラブルを生じたり、思わぬ損失を被る場合が少なくないためです。
この事例では、事業者は契約書面を受領してから20日以上経過していることを理由にクーリング・オフができないと主張していますが、マルチ商法の場合、契約書面の受領日か、商品の受領日のどちらか遅い日から起算して20日間をクーリング・オフ期間としています。
これは、マルチ商法において、大量に商品在庫を抱え込む被害が生じたことから、商品在庫を現実に見て、自分が売りさばけるかどうかを冷静に判断させるために規定されたものです。
したがって、書面を受け取っていても、商品を受領してから20日が経過していなければ、書面によりクーリング・オフが可能となります。
なお、マルチ商法の場合は、クーリング・オフ期間を経過していても、将来に向かって中途解約ができるとしています。一定の期間、一定の条件のもとに購入契約を解除して商品を返品し、適正な額の返金を受けることができるなど、返品に関するルールも法律で規定されていますので、販売の継続が難しいと思ったら中途解約を申し出ましょう。