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知的財産の権利化とノウハウ管理

 近年、企業における知的財産戦略は大きく変化しています。新しい技術やノウハウが生まれたら、むやみやたらに権利化すればいいというわけではありません。企業が保有する知的財産は、オープン化した上で特許権等の知的財産権を取得し活用する方法と、ノウハウのように公開した瞬間に模倣される可能性があるものはブラックボックス化して秘密として管理し活用する方法があります。いわゆるオープン・アンド・クローズ戦略として、経営戦略上、どのような方法、組合せを採用するか、企業においては、多大な費用を投じて研究開発を行った成果物としての新技術やノウハウをどのように管理し活用していくか、慎重に見極めることが重要になっています。

 特許権は、権利内容が明確になり、技術的思想として安定した広い範囲の保護が期待できるものの、出願内容の公開が前提であり、出願内容の記載範囲などは配慮が必要です。一方、ノウハウは秘匿されている限りは問題ありませんが、情報漏えい等の予防には限界があり、一度漏えいして損害が発生するとその回復は非常に困難といえます。ノウハウは、不正競争防止法で営業秘密として保護することができますが、そのためにはノウハウを厳格に秘密管理する必要があります。また、他者が特許出願し権利化してしまうことも考えられるため、こうした場合でも支障なく事業が継続できるよう先使用権(※)確保のための証拠資料の厳密な保全といった対策をあらかじめ講じておくことも必要です。

 このような、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、知的財産を権利化するか、営業秘密として守るかの一定の判断基準をあらかじめ決めておくことも重要であり、さらには一歩進めて標準技術化や無償開放を進めるなど、シームレスな知財戦略を立てることが不可欠です。

 政府においては、オープン・アンド・クローズ戦略や営業秘密管理など総合的な知的財産の保護・活用戦略の推進を支援する体制整備を進めるとともに、営業秘密の管理・活用方法及び知財戦略に関する情報発信を行っています。中小企業においては、こうした支援情報等を有効活用し、自社の利益拡大のための総合的な知的財産戦略を検討することが重要です。

(※)先使用権とは、他者が特許権を得た発明と同一の発明を他者の特許出願時以前から、事業として実施または実施の準備をしていた場合には、その事業を継続することができる権利

知的財産戦略