環境大善(株)[北見市] 代表取締役社長 窪之内 誠 氏

唯一無二のスペシャリティと可能性を持つ消臭液を、
北見から世界へ!

環境大善株式会社 代表取締役社長 窪之内 誠さん

面白商品だと思っていた「きえ〜る」
そのすごさに気づかされて、後継者に。

 ことの始まりはホームセンターダイゼンの役員だった父が、62歳のとき突然、「『きえ〜る』で独立する」と言い出した事でした。退職金代わりに「きえ〜る」の権利をもらって起業する、登記も済ませた、と。実は僕ら家族は、父が牛の尿から作る「きえ〜る」を冗談半分の面白商品として売っていると思っていたものですから(笑)、びっくりです。

 起業後はさまざまな方面から注目され、ある日、僕もよく知る東京の大手企業の社長のほか複数名で商談に来ると聞いたので、ちょっと虫の知らせがして同席しました。するとやはり商談ではなく、会社売却の意思はないかという話で。もちろん父にそんな意思はなかったのですが、そのとき、先方の社長から「この消臭液の魅力が君に分かるかい?」と質問され、全然わかっていないことに気づかされました。「消臭だけじゃない。すごい可能性のある液だから、ちゃんと調べたほうがいいよ」と。それをきっかけに「きえ〜る」のことを調べると、マイナスのイメージが払拭。それどころか「この商品に時代が合って来ているんじゃないか」と可能性を感じ取ったことで、父の会社を継ぐことを決意しました。

インタビューの様子1
天然成分のみの消臭液「きえ~る」
手前の右から2番目と3番目が旧パッケージ。

思い切ったリブランディングを実行。
その中で、「伝わっていますか?」の一言にハッと…

 「きえ〜る」は、いい匂いは残し、いやな臭いは消す消臭液であり、天然成分のみで出来ていて、製造も循環型という、他にないスペシャリティを持っています。とはいえ、「牛の尿が原料だから使いたくない」という人はやっぱりいる。本当なら、「きえ~る」を300ml使うと地球環境がこれだけ良くなるんだよ、みたいなことを可視化して伝えられるといいんですが、それが難しい。おまけに、当初のパッケージは、大手バラエティショップのバイヤーさんに、「今のパッケージでは都心の若い女性には、まず売れない」と断言されました。

 いろいろ勉強する中で、リブランディングを決意。アートディレクターの鎌田順也さんと出会い、依頼すると、パッケージの刷新だけでなく、「会社がどう在りたいのか」をアドバイスしてくれて、その中で、「そもそも社員に社長のやりたいことは、きちんと伝わっていますか?」と言われたんです。

 会社の運転手が父から僕に変わって、でも乗組員(社員)は変わらない。父は世界に出て行くと言っていた、それは僕も同じ思いで、むしろ一刻も速く快速列車でそこに着きたい思いがある。鎌田さんから「そういうの、伝わっていますか?」と。その言葉にハッとしました。そこで最初に手がけたのは、社員に向けて僕の構想をまとめた「従業員の皆様へ」という冊子の作成でした。そこから現在の、ミッション、ビジョン、存在意義、行動指針、製品の定義、社内共通用語などをまとめた「経営指針の書」が生まれました。毎年更新し、新たなビジョンや情報を共有するのに役立っています。

インタビューの様子2
毎年更新している「経営指針の書」

今いるスタッフで大金星をあげる方法。

 僕が恵まれているのは、右腕・左腕・頭脳になってくれる人が社内いることです。そういう人を束ねてオーガナイズする働き方が、僕には向いている。

 僕が社長になって変えた中の1つに執行役員制を導入したことがあります。よりバリバリと現場で実務を行ってもらう人員を配置したことで、僕がみんなにどう動いてほしいと思っているかを、社員に伝える役を担ってもらいました。

 その結果、スタッフの強みを上手に組み合わせてることができ、社の建て付けがまるっきり生まれ変わるくらいに再編することができました。例えば、元々の物販をメインとしながらも、研究開発型に大きく舵を切った事。これは「きえ〜る」の、より確かなエビデンスを得るためです。財務内容も当然変わってくるので、新会社を設立したような感覚で経営しています。

 研究開発型にシフトといっても、うちは兼務が多く、研究者でもマーケティングに関わっていきます。研究者として販売・営業に関わると、説得力が増すじゃないですか。スペシャリティな部分を、しっかりと学術的にPRできれば、「やっぱり、“きえ〜る”は他と違う!」と知っていただけると思っています。

アットホームではなく、
同じビジョンに向かえるかが大事。

 自分の右腕を見つけるコツは、いろんな場で、何をしたいか、ことさらにビジョンを伝えること。その理由はビジョンに共感する人と会う確率を増やすためです。志が同じ仲間とビジョンを共有し、幾多の困難をワクワクしながら乗り越えられたら良いなと思っています。社外にアドバイスを求めるのもいいですが、結局、最後に頼れるのは社内です。

 僕は社員と1ヶ月に1回以上面談するようにしています。コミュニケーションの量を増やし、質を高めていくためです。ただ仲が良いというアットホームな感じとは違う。同じビジョンを持てるかどうか。地球の健康を見つめ、世界中でこの液を役立ててもらう、そして、この液を探求するという山(目標)に登るための装備とか人員とか、誰が山頂まで行き、誰がベースキャンプで守りを固めるか、そんな計画をいつも考えています。

 執行役員は経営計画を遂行していく。マーケティング室は多くの人に商品の価値を伝える。工場は最高の製品を生み出す。経営サポート室は、経営に関わる事案全般のサポートを行う。僕の役目は、彼らの強みをどう組み合わせていくかという事。その中で意識しているのは、コンディションです。能力があっても、コンディション不良だと最大限のパフォーマンスは発揮できない。リアルの対面でもテレビ会議でも、言葉尻とか表情とかに変化を感じ取るのが大事だと思っています。また、何か起きそうな変化をいち早く察し、会社のリスクを社員にきちんと周知した上で、経営を守りながら攻める体制を作るのも取締役の役目ですね。

インタビューの様子3
工場兼社屋の屋根には、善の文字を縁取って生まれた「善玉菌の大善君」

コロナ禍の影響と、今後、目指していくこと。

 おかげさまで多少の影響で済んでいます。出歩けない期間、海外案件が結構進みました。今まではベトナムやカンボジアなど現地まで飛んで商談していたことが、オンラインでやれるようになったので効率的に進みました。コロナ以前にもテレビ会議システムはありましたが、今回強制的に使わなくてはならない状況になって、それが当たり前になった。コロナが終息した頃にはより効果的にテレビ会議とリアル面談を絡めた商談が可能になると思います。

 原料の確保も、北見は「牛の多い地域」の真ん中にあるような街ですから現在のところ順調です。資金面についてもお付き合いある金融機関すべてに財務諸表と経営リポートを毎月送付しているので、その情報を元に助成金や旬な情報をお知らせしてくれます。本当に助かっています。

 今後は「きえ〜る」の謎をもっと探究し、その正体をとらえ切ることが目標ですが、今時点では「正解を出さなくていい、最善を出す」がやるべきことだと思っています。例えばお客様の「こう使いたい」とのオーダーに対して、過去のデータや口コミから拾えた最善の回答を提出する。それができたら強いと思うんです。そしてやがては、日本国内はもちろん、東南アジア、南米、アフリカ、インドなど牛の多い国で、技術を展開できればいいなと考えています。

アトツギへのMessage

まず覚悟!
目線を現場に合わせる!
そしてコミュニケーション!

 とにかく、覚悟を決めましょう!というのが1つ。そして社内に1人でも多く自分の味方を増やすこと。さらに社外からも採用するなどして、輪を広げていくのが大事だと伝えたいです。新しいことをやるにしても、1人ではできない。

 それと、後継ぎは管理職から会社に入ることが多いと思いますが、その目線をいったん変えることが大事だと思います。現場の人たちの視点・視座・解像度・ピントにいったん合わせ、そこから改めて建て付けしていくと、きっと面白いものができる。逆にそれをしないと軋轢が生じると思います。

 また、最初の段階でコミュニケーション量が増えていないと、質も上がってこない。いいチームになり阿吽の呼吸になるには、最初の段階でコミュニケーション量をいかに増やすかという工夫も大切です。

窪之内誠
窪之内誠
1976年、北見市生まれ。大学卒業後、18年間、地元の事務機器販売会社に勤務。2016年に株式会社環境ダイゼン(当時)入社。代表取締役専務を経て、2019年2月より現職に就任し、研究開発に投資。また、北見から世界に向けたビジョン発信のためにリブランディングを決断。自社の取り組みを『アップサイクル型循環システム』と呼び、日本のみならず世界での展開を目指す。デザイン経営にも取り組み、YouTubeで「わたしのデザイン経営」を配信中。
会社概要
環境関連商品製造業
環境大善株式会社
北見市端野町三区438-7https://kankyo-daizen.jp/
1998年、ホームセンターで店長を務める窪之内 覚(現・会長)が知人の持ち込んだ「善玉活性水」の消臭力に着目し、「きえ~る」の名称で商品化、販売。2006年、ホームセンターより環境商品事業部を譲り受け、株式会社環境ダイゼンを開業。2019年に窪之内誠が代表取締役社長に就任。商品のブラッシュアップをはかり、国内だけでなく近隣アジア諸国への輸出も年々増加。2020年、社名を「環境大善株式会社」に変更。同年、地球の健康を探究するというスローガンを掲げた「土、水、空気研究所」を設立。